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Hirodon's Blog

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2012年 03月 20日

「音楽と数学の交差」受験問題になる

 なっなんと!弊著「音楽と数学の交差」(数学者桜井進氏との共著)が大学入試問題になってしまった。今年度駒澤大学で採用された。うれしい驚きだ!
それにしても、難しい問題だ!? 書いた本人が満点取れない(笑)。
 本書は内容的には桜井氏(数学)と小生(音楽)が半々で作ったが、文章化に関しては9割小生の責任。だから数学部分の内容を適切に文章化できているかむしろ不安であった。現代国語の問題として採用されたということは、文章が日本語として適切であり学生の模範なると認められたということか。
 しかし、受験劣等生だった小生の文章が入試問題になるとは、なんとも不思議な気持ち。
桜井氏の名前が引っ張ってくれた面もあると思う。この場であらためて氏に感謝の意を表したい。
 問題自体をブログ上に公開したいところだが、試験問題としての著作権があるかもしれないので、使われた原稿の一部のみを公開する。

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 宇宙は数の調和で作られている、このように考えたのは、古代ギリシャ人でした。ローマ人学者ボエティウス(480頃〜525頃)は、その著『音楽教程』で、ギリシャ人の音楽観(主にピタゴラス派の理論)をヨーロッパヘ伝えています。そこでは、宇宙の調和の根本原理が「ムジカ」(ラテン語/古代ギリシャ語ではムシケー)であり、その調和が「ハルモニア」であるとされています。「ムジカ」は英語の「ミュージック」であり、「ハルモニア」は「ハーモニー」です。
 古代ギリシャ人は、音楽には三つの種類があると考えました。それは「宇宙の音楽」(ムジカ・ムンダーナ)、「人間の音楽」(ムジカ・フマーナ)、「器具の音楽」(ムジカ・インストゥルメンターリス)です。
 第一の「ムジカ・ムンダーナ」は天空の調和そのもので、星々は素晴らしい音楽を奏でているはずだと考えたのです。第二の「ムジカ・フマーナ」は人間の魂や肉体の調和を表すもので、人間の心身も「ムジカ」の根本原理によつて成り立っていると考えました。第三の「ムジカ・インストゥルメンターリス」が実際の音楽なのです。そして「器具」と訳されてはいますが「インストゥルメンターリス」には声も含まれます。つまり、第一と第二の音楽は実際には人間の耳には聞こえないもの、音楽として人間が聞くことができるのは第三の音楽のみなのです。
 数学(mathematics)の話源はギリシャ語の「マテーマ」です。「マテーマ」は学ぶという意味の「マンタノー」から派生した言葉で、「学んだこと」というような意味から学問、そして数学を意味する言葉になりました。ピタゴラス派の人々はその「マテーマ」を、まず「数」と「量」を扱う二つの分野に分け、それが静止しているか運動しているかでさらに二つに分け、四つの教科に区分しました。そこでは、静止している数を扱う科目が「数論(算術)」、運動している数を扱う科目が「音楽」、静止している量を扱う科目が「幾何学」、運動している量を扱う科目が「天文学」とされたのです。
 つまり、古代ギリシャでは数論(算術)、音楽、幾何学、天文学が数学の四大科目でした。音楽も数学の中の一科目だつたのです(もちろん、「マテーマ」も「ムシケー」も現代の「数学」「音楽」とまったく同じ意味ではないので、単純に比較することはできないのですが・・・・)。
 その音楽は数の比を扱う分野で、美しい音楽は調和のとれた音の比によって成り立っているとされ、それこそが美の原点と考えられたのです。もっともよく協和する二つの高さの音は、1対2の関係(つまり1オクターブ)により作られているというように、ここでは常に音は数と対応して考えられ、また美しい数の比は美しい音楽を表すとも考えられたのです。

桜井進、坂口博樹「音楽と数学の交差」より

by sakagooch | 2012-03-20 22:45 | その他


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